2019.6
北海道 支笏湖
しこつ湖鶴雅別荘「碧の座」
Task
総合プランニング/コンセプトワーク/建築基本設計/内装・意匠設計/空間アートデザイン/インテリアデザイン/ロゴデザイン/サインデザイン/レストラン器デザイン/室内着・制服デザイン/販売ツールデザイン/家具・備品コーディネート
「北の時を紡ぐ」 縄文、アイヌ、現代へ
深いブルーから明るいブルー、そしてグリーンまで変幻自在に色を変え、宝石の如く光り輝く支笏湖ブルーを「碧」という言葉で表した。ロゴマークは、ターコイズのブルーの積層と縄文からアイヌへと続く祈りの文様をイメージした。
このマークを太古の縄文からの自然への「畏敬と祈りの形」とし、館内に文様として用いられている。
全景からエントランス
全室支笏湖ビューを臨む全室露天風呂付き客室24室を持つ「碧の座」。車寄せの銅貼りの天井が水庭の光を映す。
ヘギ木の格子の渡り廊下には碧の座のイメージに合わせて作ってもらた北海道の音楽家の縄文太鼓と笛の音が流れる。
エントランスと水庭
エントランスから中庭までの水庭。水に浮かぶようにつくられている。中庭のガス灯のオブジェは「風の掌」と名ずけられた。
また、水庭を眺めるウエルカムバーにはシャンパンが用意され自由に楽しむことができる。
縄文時代を彷彿させるロビー
ロビーにある万歴継承壁。この千歳の土地には、縄文時代後期の遺跡で国指定の史跡キウス周堤墓石群がある。墓としては縄文時代最大級と言われる。地面を丸く削り、掘った土を周囲に土手状に積み上げてサークル状の堤を形成、内側を墓地にしているため「周堤墓」と呼ばれている。縄文時代の遺跡には祖先が眠る墓を中心に暮らす様子が残されている。生命に対する畏敬と祈りの形をここに感じる。その紡がれた時間を地層として表現してみた。この建物を作る際に掘り出された黒土と縄文時代の日々の食材であったシジミの貝殻を1万5千個ほどを埋め込んだ。6本の太い丸柱と万歴継承壁で構成されたロビーはまさにこの館のコンセプト空間である。コンシェルジュデスクの背面の土壁は丁寧に貼り合わされた縄文土器からイメージされ、実際に土壁を割ってから貼り合わされた久住氏の想いの詰まったもの。お客様を迎える時間には碧の座のマークを組み合わせてデザインされた格子文様から差し込む夕日が壁に映って美しい。
縄文を彷彿させる暖炉のあるラウンジ
縄文暖炉のあるラウンジ青陽。北海道で暖炉をつくって7つ目になる。それぞれのコンセプトに合わせて暖炉のデザインをしてきたが、碧の座の暖炉は、はじめての土壁暖炉。原寸大の紙に縄文の文様を書く。縄文土器や土偶でさえ、こんなに大きなものは無かろうに。空に高く登る縄文の縄目、ぐるぐるとした渦、母型の土偶を彷彿させる。この土偶型暖炉は堂々とした豊かさをもってこの館を守る母のような存在となった。このウエルカムラウンジはこの暖炉を中心に、藍染め工房、アイヌ衣装の貸し出し、民族ライブラリー、ティセレモニーなどもでき、時代を超えた茶の間のような役割をしている。
ラウンジとバー
二つの水庭に囲まれたラウンジとバー青藍。水庭の向こうには縄文暖炉のあるウエルカムラウンジ青陽がある。水庭を挟んで暗と明を対照的にデザインした。
客室
全室支笏湖ビューの100㎡から200㎡の客室。ゆったりとした露天風呂と内風呂客室付きで満足度の高いリゾート温泉旅館を目指した。
寝室、リビング、ダイニング、ウォークインクローゼットなど長期滞在にもふさわしい空間構成となっている。
料亭と鉄板焼き屋
料亭「水白」と離れの鉄板焼き屋「青翠」。滞在型のお客様にも対応できるように二つの異なるタイプの料理屋を持つ。モダンな料理屋と古民家のような木造鉄板焼き屋。料理も器も素材に向き合った「素にして美しい」をコンセプトにした。
土壁のタブロー
久住氏の左官チームでつくられた支笏湖の冬景。工事期間は冬に向かって行われた。帰りの車の窓から見える冬の様相をコテで仕上げていった。
トリートメントルーム
トリートメント「玉青」。最上階にあり、朝はパーテーションを開けヨガをすることもできる。