しこつ湖鶴雅別荘「碧の座」

2019.6

北海道 支笏湖

しこつ湖鶴雅別荘「碧の座」

Task

総合プランニング/コンセプトワーク/建築基本設計/内装・意匠設計/空間アートデザイン/インテリアデザイン/ロゴデザイン/サインデザイン/レストラン器デザイン/室内着・制服デザイン/販売ツールデザイン/家具・備品コーディネート

「北の時を紡ぐ」 縄文、アイヌ、現代へ

しこつ湖鶴雅別荘「碧の座」北東北の縄文を表現する

この施設のある支笏湖は、千歳空港から車で40分ほどのところにあり、透明度が高く最大深度360mもあることから冬でも凍ることのない湖です。その湖の色を支笏湖ブルーと呼びます。その刻々と移り変わるブルーを鉱石の碧にたとえてこの旅館を「碧の座」と名付けました。そしてこの地は、北東北遺跡群の最も北にあたる地域で、千歳にはキウス周堤墓群という国指定史跡があります。縄文時代後期につくられた縄文時代最大級の集団墓です。それはこの地に豊かな自然風土に恵まれ平和な村落と文化があったことを表しています。近代歴史の浅い北海道にあらためて、ここ支笏湖の施設を通して、縄文、アイヌ、現代へと「北の時を紡ぐ」ことをコンセプトとしました。
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しこつ湖鶴雅別荘「碧の座」設計プラン 北海道のハイエンドリゾートを目指す

近年の北海道リゾートの海外評価の高まりを背景に、この施設ではハイエンドリゾートを目標とした事業プランとし、国内外の富裕層の滞在型、体験型観光のニーズを視野にいれて設計プランに入りました。全室支笏湖ビューを可能にした合計25室。100㎡の客室21室、最上階にはガラス天井のリビングを設けました。別棟としてプライバシーを重視した120㎡以上のエグゼクティブヴィラ4室、うち2室のスイートヴィラは200㎡以上の広さを持ったメゾネットタイプです。全室にファミリーでゆったり入れる大型露天風呂、ジャグジー風呂、インクルーシブドリンクを充実させたダイニングルーム、滞在を快適にする大きめのウォークインクローゼットを作りました。パブリックスペースとしては、JBLの美術品のようなパラゴンの音を愉しむバーラウンジ、シャンパンを愉しむデッキラウンジ、藍染体験工房や立礼の茶席を愉しむカルチャーラウンジ、全個室の料亭、離れの鉄板焼、100インチモニターを設置したコンベンションルームなどを計画しました。
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しこつ湖鶴雅別荘「碧の座」設計主旨 郷土の文化を深堀して表現する

「碧の座」はその名を表すように碧色の水庭に浮かぶようにつくられています。矢印のように組んだへぎ板のパーテーションが並ぶガラスのアプローチには、風に揺れる縄文太鼓と笛の幻想的な音が歩調に合わせて静かに響き、太古の時代へ誘うイントロダクションとなります。縄文文様を形どった玄関扉から、この地にあった最北の縄文文化と北海道固有のアイヌ文化と現代を融合させた空間が広がっていきます。このコンセプトを表現するのに欠かせなかった仕事は完成度の高い土壁でした。そのために左官仕事を久住章氏に依頼しました。この施設のコンセプトが最も集約されている空間はロビーです。ロビーには力強く天に突き刺していくような黒く太い6本の柱で構成されており、その柱の間の壁に千歳の縄文時代の地層を表現した土壁を作り、周りを碧の座のマークから派生した文様を削り出したパーテーションで囲んでいます。時を幾重にも重ねたような積層の土壁の黒土は基礎をつくるときに掘り起こした土です。土壁になりづらい土でしたがすさなどの配合の調整をして仕上げてもらいました。貝塚としていれたシジミは、一万5千個ほどになりました。そして、ウエルカムラウンジの6mほどある暖炉の土壁は縄文文様を思わせる縄目が縄文暖炉と呼ぶにふさわしい存在感です。下地にデザインを原寸大にした紙からトレースし、その線をたどりながら忠実に表現していく巧みなコテさばきは圧巻でした。また館内には、千歳で発掘された縄文土器、アイヌの作家の彫刻や伝統的な衣装、そして現代作家のモダンアートなどコンセプトに則ったオブジェが点々と美術館のように展示されています。
この地にしかできないことを空間に表現し、独自の空気感を作り出すことが旅館設計には大切なことであり、また、ハイエンドリゾートにこそ求められることと思います。

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深いブルーから明るいブルー、そしてグリーンまで変幻自在に色を変え、宝石の如く光り輝く支笏湖ブルー

しこつ湖鶴雅別荘「碧の座」深いブルーから明るいブルー、そしてグリーンまで変幻自在に色を変え、宝石の如く光り輝く支笏湖ブルーを「碧」という言葉で表した。ロゴマークは、ターコイズのブルーの積層と縄文からアイヌへと続く祈りの文様をイメージした。
このマークを太古の縄文からの自然への「畏敬と祈りの形」とし、館内に文様として用いられている。

ロゴマークは、ターコイズのブルーの積層と縄文からアイヌへと続く祈りの文様をイメージ

しこつ湖鶴雅別荘「碧の座」 全景からエントランス

全室支笏湖ビューを臨む全室露天風呂付き客室24室を持つ「碧の座」。車寄せの銅貼りの天井が水庭の光を映す。
ヘギ木の格子の渡り廊下には碧の座のイメージに合わせて作ってもらた北海道の音楽家の縄文太鼓と笛の音が流れる。

  • 全室支笏湖ビューを臨む全室露天風呂付き客室24室を持つ「碧の座」
  • 車寄せの銅貼りの天井が水庭の光を映す
  • 車寄せの銅貼りの天井が水庭の光を映す
  • ヘギ木の格子の渡り廊下には碧の座のイメージに合わせて作ってもらた北海道の音楽家の縄文太鼓と笛の音が流れる
  • ヘギ木の格子の渡り廊下には碧の座のイメージに合わせて作ってもらた北海道の音楽家の縄文太鼓と笛の音が流れる
しこつ湖鶴雅別荘「碧の座」 エントランスと水庭

エントランスから中庭までの水庭。水に浮かぶようにつくられている。中庭のガス灯のオブジェは「風の掌」と名ずけられた。
また、水庭を眺めるウエルカムバーにはシャンパンが用意され自由に楽しむことができる。

  • エントランスから中庭までの水庭。水に浮かぶようにつくられている
  • 中庭のガス灯のオブジェは「風の掌」と名ずけられた
  • 中庭のガス灯のオブジェは「風の掌」と名ずけられた
  • 水庭を眺めるウエルカムバーにはシャンパンが用意され自由に楽しむことができる
  • 水庭を眺めるウエルカムバーにはシャンパンが用意され自由に楽しむことができる
しこつ湖鶴雅別荘「碧の座」 縄文時代を彷彿させるロビー

ロビーにある万歴継承壁。この千歳の土地には、縄文時代後期の遺跡で国指定の史跡キウス周堤墓石群がある。墓としては縄文時代最大級と言われる。地面を丸く削り、掘った土を周囲に土手状に積み上げてサークル状の堤を形成、内側を墓地にしているため「周堤墓」と呼ばれている。縄文時代の遺跡には祖先が眠る墓を中心に暮らす様子が残されている。生命に対する畏敬と祈りの形をここに感じる。その紡がれた時間を地層として表現してみた。この建物を作る際に掘り出された黒土と縄文時代の日々の食材であったシジミの貝殻を1万5千個ほどを埋め込んだ。6本の太い丸柱と万歴継承壁で構成されたロビーはまさにこの館のコンセプト空間である。コンシェルジュデスクの背面の土壁は丁寧に貼り合わされた縄文土器からイメージされ、実際に土壁を割ってから貼り合わされた久住氏の想いの詰まったもの。お客様を迎える時間には碧の座のマークを組み合わせてデザインされた格子文様から差し込む夕日が壁に映って美しい。

  • ロビーにある万歴継承壁
  • ロビーにある万歴継承壁
  • ロビーにある万歴継承壁
  • コンシェルジュデスクの背面の土壁
  • お客様を迎える時間には碧の座のマークを組み合わせてデザインされた格子文様
しこつ湖鶴雅別荘「碧の座」 縄文を彷彿させる暖炉のあるラウンジ

縄文暖炉のあるラウンジ青陽。北海道で暖炉をつくって7つ目になる。それぞれのコンセプトに合わせて暖炉のデザインをしてきたが、碧の座の暖炉は、はじめての土壁暖炉。原寸大の紙に縄文の文様を書く。縄文土器や土偶でさえ、こんなに大きなものは無かろうに。空に高く登る縄文の縄目、ぐるぐるとした渦、母型の土偶を彷彿させる。この土偶型暖炉は堂々とした豊かさをもってこの館を守る母のような存在となった。このウエルカムラウンジはこの暖炉を中心に、藍染め工房、アイヌ衣装の貸し出し、民族ライブラリー、ティセレモニーなどもでき、時代を超えた茶の間のような役割をしている。

  • 縄文暖炉のあるラウンジ青陽
  • 縄文暖炉のあるラウンジ青陽
  • 縄文暖炉のあるラウンジ青陽
  • 碧の座の暖炉は、はじめての土壁暖炉
  • アイヌ衣装の貸し出し
  • 藍染め工房
しこつ湖鶴雅別荘「碧の座」 ラウンジとバー

二つの水庭に囲まれたラウンジとバー青藍。水庭の向こうには縄文暖炉のあるウエルカムラウンジ青陽がある。水庭を挟んで暗と明を対照的にデザインした。

  • 二つの水庭に囲まれたラウンジとバー青藍
  • 二つの水庭に囲まれたラウンジとバー青藍
  • 水庭の向こうには縄文暖炉のあるウエルカムラウンジ青陽がある
しこつ湖鶴雅別荘「碧の座」 客室

全室支笏湖ビューの100㎡から200㎡の客室。ゆったりとした露天風呂と内風呂客室付きで満足度の高いリゾート温泉旅館を目指した。
寝室、リビング、ダイニング、ウォークインクローゼットなど長期滞在にもふさわしい空間構成となっている。

  • 全室支笏湖ビューの100㎡から200㎡の客室
  • 全室支笏湖ビューの100㎡から200㎡の客室
  • 全室支笏湖ビューの100㎡から200㎡の客室
  • 全室支笏湖ビューの100㎡から200㎡の客室
  • 全室支笏湖ビューの100㎡から200㎡の客室
  • 全室支笏湖ビューの100㎡から200㎡の客室
  • 全室支笏湖ビューの100㎡から200㎡の客室
  • 全室支笏湖ビューの100㎡から200㎡の客室
  • 全室支笏湖ビューの100㎡から200㎡の客室
  • 全室支笏湖ビューの100㎡から200㎡の客室
  • 全室支笏湖ビューの100㎡から200㎡の客室
  • 全室支笏湖ビューの100㎡から200㎡の客室
  • 全室支笏湖ビューの100㎡から200㎡の客室
  • 全室支笏湖ビューの100㎡から200㎡の客室
  • 全室支笏湖ビューの100㎡から200㎡の客室
  • 全室支笏湖ビューの100㎡から200㎡の客室
  • 全室支笏湖ビューの100㎡から200㎡の客室
  • 全室支笏湖ビューの100㎡から200㎡の客室
  • 全室支笏湖ビューの100㎡から200㎡の客室
  • 全室支笏湖ビューの100㎡から200㎡の客室
  • 全室支笏湖ビューの100㎡から200㎡の客室
しこつ湖鶴雅別荘「碧の座」 料亭と鉄板焼き屋

料亭「水白」と離れの鉄板焼き屋「青翠」。滞在型のお客様にも対応できるように二つの異なるタイプの料理屋を持つ。モダンな料理屋と古民家のような木造鉄板焼き屋。料理も器も素材に向き合った「素にして美しい」をコンセプトにした。

  • 料亭「水白」と離れの鉄板焼き屋「青翠
  • 料亭「水白」と離れの鉄板焼き屋「青翠
  • 料亭「水白」と離れの鉄板焼き屋「青翠
  • 料亭「水白」と離れの鉄板焼き屋「青翠
  • 料亭「水白」と離れの鉄板焼き屋「青翠
  • 料亭「水白」と離れの鉄板焼き屋「青翠
  • 料亭「水白」と離れの鉄板焼き屋「青翠
  • 料亭「水白」と離れの鉄板焼き屋「青翠
  • 料亭「水白」と離れの鉄板焼き屋「青翠
  • 料亭「水白」と離れの鉄板焼き屋「青翠
  • 料亭「水白」と離れの鉄板焼き屋「青翠
  • 料亭「水白」と離れの鉄板焼き屋「青翠
  • 料亭「水白」と離れの鉄板焼き屋「青翠
  • 料亭「水白」と離れの鉄板焼き屋「青翠
  • 料亭「水白」と離れの鉄板焼き屋「青翠
  • 料亭「水白」と離れの鉄板焼き屋「青翠
  • 料亭「水白」と離れの鉄板焼き屋「青翠
  • 料亭「水白」と離れの鉄板焼き屋「青翠
  • 料亭「水白」と離れの鉄板焼き屋「青翠
  • 料亭「水白」と離れの鉄板焼き屋「青翠
  • 料亭「水白」と離れの鉄板焼き屋「青翠
  • 料亭「水白」と離れの鉄板焼き屋「青翠
しこつ湖鶴雅別荘「碧の座」 土壁のタブロー

久住氏の左官チームでつくられた支笏湖の冬景。工事期間は冬に向かって行われた。帰りの車の窓から見える冬の様相をコテで仕上げていった。

  • 久住氏の左官チームでつくられた支笏湖の冬景
しこつ湖鶴雅別荘「碧の座」 トリートメントルーム

トリートメント「玉青」。最上階にあり、朝はパーテーションを開けヨガをすることもできる。

  • トリートメント「玉青」
  • 最上階にあり、朝はパーテーションを開けヨガをすることもできる
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