〈鍛鉄〉
北海道の仕事をするようになって、長い冬を楽しく過ごすために暖炉をつくることが多くなりました。人は火に集まるとは全くその通りで、日本の囲炉裏も家の中心にありました。アイヌ語では、火を「アペ」。囲炉裏を「アペソ」と言います。アペソで暖炉を囲んで本を読んだり、ワインを飲んだり、マシュマロを焼いたりして楽しみます。
そんな暖炉をより館に合わせて個性的にするために鍛鉄で暖炉カバーをつくってきました。各館のコンセプトに合わせてつくる鍛鉄は、デザインスケッチを書き、鉄の叩き方や肌合いや色を決めつくっていきます。私たちがつくる鍛鉄の仕事は大きくダイナミックなものが多いのですが、不思議と身近で温かいものに感じます。それは手仕事が成せる味わいのおかげかと思います。
鍛鉄の仕事は、長年、ブルームアイアンファクトリーと仕事をしています。重量がある大きなものなので現場取り付けは大変ですが、事前に細かく建築現場とのやりとりをしながら行っています。その緊張感もまたものづくりの醍醐味です。
大沼オーベルジュエプイでの暖炉取り付け工事
2016.08
北海道 大沼
「大沼鶴雅オーベルジュ エプイ」
エプイとは、アイヌ語で樹々の花や実のことを言います。鍛鉄の枝が手を広げるように力強く天井を突き上げます。
その枝々からアイヌ文様の花や灯になった実が下がっています。
2010.08
北海道 定山渓
「定山渓鶴雅リゾートスパ 森の謌」
「森の不思議」をテーマに作られたリゾートホテルのラウンジにある暖炉。小枝に実がなっているような細かなパーツをレースの積み木のように組み合わせてつくりました。森の中から見上げる樹々から漏れる木漏れ日のようなイメージです。
2009.05
北海道 支笏湖
「しこつ湖鶴雅リゾートスパ 水の謌」
吹き抜けのラウンジに柱のように立っている暖炉。このラウンジの名前は「アペソ」囲炉裏という意味です。 これが大きな鍛鉄のオブジェのような暖炉の初めての挑戦でした。薪が燃え上がる炎を吸い上げる水の中の渦のようなイメージでデザインしました。
2007.06
北海道 網走
「あばしり湖鶴雅リゾート 北天の丘」
オホーツク民族とは、寡黙な神秘に満ちた民族です。しかし、そのかすかな足跡から、広い大地を見下ろす大鷲と海原を分け入る鯨の勇壮なイメージがが浮かびます。オホーツク文様のイメージを鍛鉄のパーテーションに落とし込みました。オホーツク民族の強さを荒い鉄の槌目で表しました。
2003.04
東京 東銀座
「新橋演舞場」
玄関の引き手。東雲をイメージして内側を赤に焼き付けしています。玄関はハレの色、赤をポイントにつくらえました。
2012.07
北海道 阿寒湖
「あかん湖鶴雅ウィングス」
阿寒湖に向かって、祈りを捧げるカムイノミの場としてつくられました。アイヌ文様をイメージにした炎の形をした鍛鉄のオブジェ。